第二種電気工事士は独学で受かる?合格率で見る勉強時間と進め方
第二種電気工事士は、独学で合格している人が実際に多数いる試験です。ただし「学科」と「技能」で性質がまったく違い、独学がつまずくのはほぼ技能試験のほうです。
この記事では、一般財団法人 電気技術者試験センターが公表している合格率データをもとに、独学の現実的な難易度、必要な勉強時間の考え方、技能試験で落ちる理由、独学が向く人と向かない人を整理します。
独学で受かるのか、まず合格率で確認する
感覚論の前に、公表されている数字を見ます。第二種電気工事士は学科試験(旧・筆記試験)と技能試験の2段階で、両方に合格する必要があります。
| 年度 | 学科 受験者 | 学科 合格者 | 学科 合格率 | 技能 受験者 | 技能 合格者 | 技能 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和7年度 | 139,087人 | 78,711人 | 56.6% | 99,610人 | 71,471人 | 71.8% |
| 令和6年度 | 132,462人 | 77,045人 | 58.2% | 94,238人 | 66,215人 | 70.3% |
| 令和5年度 | 134,025人 | 79,655人 | 59.4% | 95,337人 | 67,749人 | 71.1% |
| 令和4年度 | 145,088人 | 81,179人 | 56.0% | 97,659人 | 70,888人 | 72.6% |
出典: 一般財団法人 電気技術者試験センター。合格率は受験者数に対する合格者数の割合で、上期・下期の合計です。2026年7月26日取得。
学科は4割以上が落ちている
学科の合格率は4年間で56.0〜59.4%です。半分強が受かる試験ですが、逆に言えば4割以上が不合格になっています。「簡単な資格」と紹介されることもありますが、無勉強で受かる水準ではありません。
参考までに、令和8年度上期の学科試験は受験78,290人・合格48,692人で合格率62.2%でした。過去4年より高い数字ですが、それでも約4割が不合格です。
技能試験の受験者が、学科合格者より多い
ここが多くの解説記事で説明されていない点です。令和7年度を見てください。
- 学科の合格者: 78,711人
- 技能の受験者: 99,610人
技能試験の受験者のほうが、学科合格者より約2万人多くなっています。これは技能試験に学科免除者が加わるためです。前年度の学科に合格して技能で不合格になった人や、電気系の学校を卒業して学科免除の要件を満たす人が含まれます。
つまり技能試験の受験者には「一度技能で落ちた経験者」が相当数まざっています。合格率71.8%という数字は、まっさらな初受験者だけの合格率ではない、と理解しておくほうが安全です。
学科から受けた場合の通算合格率は約4割
学科から受験する人が1年で両方通過する確率は、単純にかけ算すると次のようになります。
令和7年度の場合、56.6% × 71.8% = 約40.6%。
上で書いたとおり技能試験の合格率には免除者が含まれるため、これはあくまで目安です。ただ「学科から受けて一発で取れる人は5人に2人くらい」という感覚は、実態から大きく外れていません。
独学で狙える試験ではありますが、片手間で受かる試験でもないというのが数字の結論です。
必要な勉強時間の考え方
必要な時間は前提知識で大きく変わるため、「何時間」と一律に言うことはできません。ただ、試験の構造から逆算すると考え方は整理できます。
学科試験に必要なこと
学科は50問のマークシートで、合格ラインは60点(30問正解)です。出題範囲は電気理論、配線設計、電気機器・材料・工具、施工方法、検査方法、法令、配線図など広く分かれています。
重要なのは、電気理論の計算問題を全部捨てても合格ラインに届く構成になっていることです。配線図の記号、工具や材料の名前、施工方法、法令は暗記で取れます。数学が苦手で諦める人がいますが、その必要はありません。
過去問が繰り返し出題される傾向が強い試験なので、独学の基本形は「テキストを1周 → 過去問を数年分繰り返す」です。過去問で安定して7割取れるようになった時点が、ひとつの目安になります。
技能試験に必要なこと
技能試験は、支給された材料を使って制限時間40分以内に配線作業を完成させる実技試験です。ここが独学最大の関門になります。
技能試験には候補問題があらかじめ公表されるという大きな特徴があります。試験センターが年度ごとに候補問題を公表し、本番ではその中から1問が出題されます。範囲が事前にわかっているという意味では、対策しやすい試験です。
ただし、知っていることと40分以内に手を動かして完成させられることは別です。技能試験には欠陥が1つでもあれば不合格という判定基準があり、寸法違い、心線の露出、接続不良などで落ちます。時間内に終わらなければ当然不合格です。
したがって技能対策は、読む勉強ではなく実際に手を動かした回数がそのまま結果になります。
独学の最大の壁は「材料が手元にないこと」
技能試験の練習には、複線図を書く紙だけでなく実物が必要です。具体的には次のものが要ります。
- 指定工具(ペンチ、ドライバー、ウォーターポンププライヤ、電工ナイフ、スケール、リングスリーブ用圧着工具)
- 候補問題を練習するためのケーブル類
- ランプレセプタクル、露出形コンセント、埋込器具、端子台などの器具
- リングスリーブ、差込形コネクタなどの接続材料
ケーブルと接続材料は練習すると消費します。1周だけ練習して本番に臨むのは危険で、最低でも2〜3周は繰り返したいところです。候補問題を通しで練習しようとすると、必要な材料の量はそれなりになります。
ここを軽く見て、工具だけ買って材料を都度買い足そうとすると、種類と長さの計算が煩雑になり、練習が止まりやすくなります。独学が失敗するとしたら、実力ではなくこの段取りで挫折するパターンが多いです。
独学が向く人・講座を使ったほうがいい人
合格率から見るかぎり、第二種電気工事士は独学で十分狙える試験です。ただし全員に独学が最適というわけではありません。
独学で問題ない人
- 過去問を繰り返す勉強法が苦にならない
- 自分でスケジュールを引いて進められる
- 技能練習の場所(作業できる机と時間)を確保できる
- すでに現場で電気工事に触れている、または先輩に聞ける環境がある
特に4つ目は大きく、実務側にいる人は独学の成功率が上がります。器具の名前と実物が一致しているだけで、学科の暗記量が体感で減ります。
講座を検討したほうがいい人
- 技能試験の手順を、文章や動画だけでは再現できる気がしない
- 過去に技能試験で不合格になっている
- 独学の教材選びと材料調達の段階で止まってしまう
- 受験を会社に申告していて、期限までに確実に取る必要がある
費用をかけるかどうかは、不合格になって次の回まで待つコストと比べて判断するのが現実的です。年に上期・下期がありますが、1回落ちれば数か月単位で先送りになります。
資格を取ったあと、実際どうなるのか
資格の勉強を始める前に、取った先の話も確認しておきます。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)に、電気工事士の統計が掲載されています。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 賃金(年収) | 628.1万円 |
| 就業者数 | 379,510人 |
| 労働時間(月) | 163時間 |
| 平均年齢 | 41.6歳 |
| 時給換算 | 2,908円 |
出典: 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)。就業者数は令和2年国勢調査、賃金・労働時間・平均年齢は令和7年賃金構造基本統計調査を job tag が加工したものです。job tag 自身が「統計データは、必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と注記しています。
ただし、この628.1万円は見習いからベテランまでを平均した値です。平均年齢41.6歳という数字が示すとおり、資格を取った直後の未経験者がこの水準になるわけではありません。
また、第二種電気工事士は入口を広げる資格であって、ゴールではありません。取得しても現場で作業を覚える期間は必要です。資格手当や評価への反映は会社によって差があるため、就職・転職を前提にするなら求人側の条件も見ておくべきです。
職種を横断して比べたい人は、18職種の年収・就業者数を公的データで比較もあわせてご覧ください。
第一種電気工事士との違い
第二種の次に第一種を検討する人も多いので、合格率を並べておきます。
| 年度 | 学科 受験者 | 学科 合格率 | 技能 受験者 | 技能 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和7年度 | 36,154人 | 57.4% | 28,403人 | 58.1% |
| 令和6年度 | 35,320人 | 56.7% | 28,372人 | 59.9% |
| 令和5年度 | 33,035人 | 61.6% | 26,143人 | 60.6% |
| 令和4年度 | 37,247人 | 58.2% | 26,578人 | 62.7% |
出典: 一般財団法人 電気技術者試験センター。2026年7月26日取得。
注目すべきは技能試験の合格率です。第二種が70〜72%台で安定しているのに対し、第一種は58〜62%台と明確に低くなっています。学科の合格率はほぼ同水準なので、差がついているのは技能のほうです。
また受験者数は第二種139,087人に対し第一種36,154人で、約3.8分の1です。第一種は実務経験による免状交付要件もあるため、まず第二種から入るのが一般的な順序になります。
よくある質問
第二種電気工事士は独学で合格できますか?
できます。学科の合格率は56.0〜59.4%、技能は70.3〜72.6%で、独学で合格している人は多数います。ただし学科から受けて一度で両方通過する目安は約4割です。過去問中心の学習と、技能試験の実技練習を実際に手を動かして繰り返せるかどうかで結果が分かれます。
数学が苦手でも受かりますか?
受かります。学科試験は50問中30問正解で合格のため、電気理論の計算問題を捨てても合格ラインに届く構成です。配線図の記号、材料・工具、施工方法、法令など暗記で取れる範囲を確実にするほうが効率的です。
技能試験のほうが合格率が高いのに、なぜ難関と言われるのですか?
技能試験の受験者には、前年度に学科合格した人や学科免除の要件を満たす人が含まれるためです。令和7年度は学科合格者78,711人に対し技能受験者99,610人で、一度技能で不合格になった経験者も相当数含まれます。表面の合格率ほど初受験者に易しいわけではありません。
技能試験の練習は何周すればいいですか?
回数の正解はありませんが、候補問題を1周しただけで本番に臨むのは危険です。技能試験は欠陥が1つでもあると不合格になり、制限時間も40分と限られています。時間を計って通しで作れる状態になるまで繰り返すのが基本です。材料は練習で消費するため、何周する予定かを先に決めてから調達すると計画が立てやすくなります。
第二種を取れば未経験でも就職できますか?
応募できる求人の幅は広がりますが、資格だけで即戦力になるわけではありません。現場で作業を覚える期間は必要です。資格取得支援や教育体制がある会社を選ぶと続けやすくなります。
いきなり第一種を受けてもいいですか?
受験自体は可能ですが、第一種は技能試験の合格率が58〜62%台で第二種より低く、免状交付には実務経験も必要です。まず第二種を取得してから第一種に進むのが一般的な順序です。
参考にした公的情報
試験日程、受験手数料、候補問題、免状交付の要件は変更されることがあります。申込を進める前に、必ず公式サイトの最新情報を確認してください。
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まとめ
第二種電気工事士は独学で合格できる試験です。学科は過去問中心の暗記で対応でき、計算問題を捨てても合格ラインに届きます。
一方で、学科の4割以上が不合格になっている事実、そして学科から受けて一度で両方通過する目安が約4割であることも、数字が示しています。独学で失敗するとしたら、多くは技能試験の練習量と材料の段取りが原因です。
資格を取る前に「そもそも電気工事士という働き方が自分に合うのか」を確認しておくと、勉強を続けやすくなります。