未経験から電気工事士になる手順|資格は先か後か、求人の見分け方

未経験から電気工事士になることは可能です。実際、第二種電気工事士の学科試験は毎年13万人以上が受験しており、その多くは実務未経験からの挑戦です。

ただし、電気工事は資格がないとできない作業が法律で決まっている職種です。この点を踏まえずに求人へ応募すると、入社後に「思っていた仕事と違う」となりやすくなります。

この記事では、未経験から入る2つのルート、無資格で何ができて何ができないか、求人で確認すべき点を順に整理します。

未経験から入るルートは2つ

大きく分けて、次の2通りです。どちらが正解というものではなく、条件によって向き不向きがあります。

ルートA: 資格なしで入社し、働きながら取る

電気工事会社に未経験・無資格で入り、補助作業をしながら第二種電気工事士の取得を目指す方法です。

ルートB: 先に第二種を取ってから応募する

在職中や求職中に第二種電気工事士を取得し、資格保有者として応募する方法です。

どちらを選ぶかの判断基準

現在の状況で考えるのが現実的です。

無資格で何ができて、何ができないか

ここが未経験者にとって最も重要な前提です。

電気工事士法により、一般用電気工作物等の電気工事の作業は、電気工事士でなければ従事できません(政令で定める軽微な工事を除く)。つまり無資格の状態では、住宅のコンセントや配線の接続といった中心的な作業を自分で行うことはできません。

無資格で入社した場合に担当するのは、次のような作業が中心になります。

「見習い期間は雑用ばかりで割に合わない」という声がありますが、その一因はここにあります。やらせてもらえないのではなく、法律上できないという部分が含まれています。この構造を知っていれば、見習い期間の受け止め方は変わります。

逆に言えば、資格を取ることが、任される作業を増やす最短ルートだということです。

第二種と第一種の範囲の違い

第二種電気工事士は一般用電気工作物等の工事に従事でき、住宅や小規模な店舗などが主な対象になります。第一種はこれに加えて、自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)の工事にも従事できます。ビルや工場などの規模の大きい設備が対象に入ります。

ただし第一種は免状の交付に実務経験の要件があるため、未経験者がいきなり第一種で現場に立てるわけではありません。まず第二種から入るのが一般的な順序です。

資格の範囲と免状交付の要件は法令改正で変わることがあります。受験や申請の前に、必ず電気技術者試験センターおよび所管官庁の最新情報を確認してください。

第二種電気工事士を取るまでの流れ

試験は学科試験と技能試験の2段階で、両方に合格する必要があります。公表されている合格率は次のとおりです。

第二種電気工事士試験の受験者数と合格率(電気技術者試験センター)
年度学科 受験者学科 合格率技能 受験者技能 合格率
令和7年度139,087人56.6%99,610人71.8%
令和6年度132,462人58.2%94,238人70.3%
令和5年度134,025人59.4%95,337人71.1%
令和4年度145,088人56.0%97,659人72.6%

出典: 一般財団法人 電気技術者試験センター。合格率は受験者数に対する合格者数の割合で、上期・下期の合計です。2026年7月26日取得。

学科は50問のマークシートで、合格ラインは60点です。電気理論の計算問題を捨てても合格ラインに届く構成なので、数学が苦手でも対応できます。

技能試験は、支給された材料で制限時間40分以内に配線作業を完成させる実技試験です。候補問題があらかじめ公表されるため範囲は事前にわかりますが、欠陥が1つでもあれば不合格になります。未経験者がつまずくのはほぼこちらです。

勉強の進め方は第二種電気工事士は独学で受かるかで詳しく解説しています。

未経験求人で確認すべき6点

電気工事士の求人は「未経験歓迎」と書かれていても中身の差が大きい職種です。応募前に次の点を確認してください。

1. どの分野の電気工事か

住宅、ビル、工場、通信設備、空調、メンテナンスでは仕事内容がまったく違います。求人票の職種名だけでは判断できないため、施工実績や事業内容の欄を見てください。

2. 資格取得支援の中身

「資格取得支援あり」の一言でも、受験料負担のみの会社と、教材・講習・技能練習の材料まで用意する会社があります。何をどこまで負担してもらえるのかを具体的に確認してください。

3. 資格手当の額

第二種取得後に手当がつくのか、月いくらか、昇給に反映されるのかは会社ごとに異なります。資格を取るモチベーションに直結する部分です。

4. 最初の3か月で何を覚えるか

面接で聞くべき質問です。教育の順序を答えられる会社は、未経験者を受け入れる体制があります。「見て覚えて」しか返ってこない場合は、教育の仕組みがない可能性があります。

5. 夜間・休日対応と出張の有無

店舗や施設の工事は営業時間外に行うことがあり、夜間作業が発生する分野があります。生活リズムに直結するため、応募前に確認してください。

6. 工具の支給か自己負担か

入社時に工具を自分で揃える必要があるか、会社が支給・貸与するかは分かれます。初期費用に関わる部分です。

年齢は関係あるか

公的統計から、年齢について確認できることを整理します。

job tag による電気工事士の統計(2026年7月26日時点)
項目
就業者数379,510人
平均年齢41.6歳
賃金(年収)628.1万円
労働時間(月)163時間

出典: 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)。就業者数は令和2年国勢調査、賃金・労働時間・平均年齢は令和7年賃金構造基本統計調査を job tag が加工したものです。

就業者数は約38万人で、建設系の職種としては規模が大きい部類です。平均年齢41.6歳は、大工の50.2歳と比べると若い水準にあります。

ただし、公的統計から「何歳まで未経験で入れるか」を読み取ることはできません。年齢の受け入れ幅は会社ごとの採用方針の問題です。当サイトでは出典を示せない数値は掲載しない方針のため、ここで「○歳までなら大丈夫」と書くことはしません。

確実に言えるのは、年齢が上がるほど、資格を持っているかどうかの重みが増すということです。ルートBを選ぶ判断材料になります。

電気工事士以外も比較したい場合

電気や設備に興味があっても、電気工事士が最適とは限りません。近い職種を挙げます。

設備管理・保全

工事現場を回るのではなく、建物や設備の点検・保守が中心です。電気の知識を活かしつつ、より固定的な働き方をしたい人の候補になります。詳しくは設備管理・ビルメンの仕事内容と年収を参照してください。

配管・設備工

水道、空調、ガスなどのライフラインを扱います。仕組みを理解して施工する点は電気工事士と近く、賃金は523.1万円です。配管工の仕事内容と年収で解説しています。

施工管理

自分で施工するより工程や人の調整に関心があるなら候補になります。建築施工管理技術者の賃金679.1万円は18職種で最も高い水準ですが、書類作成や調整業務が中心になります。施工管理に向いてる人を参照してください。

よくある質問

未経験・無資格でも電気工事会社に入れますか?

入れます。ただし電気工事士法により、一般用電気工作物等の電気工事の作業は電気工事士でなければ従事できないため、無資格の間は補助作業や運搬・片付けが中心になります。資格を取ることで任される範囲が広がります。

資格は先に取るべきですか、入社後でいいですか?

状況によります。今すぐ働く必要があるなら、資格取得支援と教育体制がある会社に入って働きながら取るほうが現実的です。在職中で勉強時間を作れるなら、先に第二種を取ってから転職するほうがリスクが小さくなります。

見習い期間に雑用が多いのはなぜですか?

会社の方針だけでなく、法律上の制約が含まれます。無資格では電気工事の中心的な作業に従事できないため、運搬・片付け・補助作業が中心になります。資格取得が作業範囲を広げる直接の手段です。

何歳まで未経験で入れますか?

公的統計から年齢の上限を読み取ることはできず、会社ごとの採用方針によります。ただし年齢が上がるほど、資格を持っているかどうかの重みは増します。先に第二種を取得してから応募する選択肢を検討する価値があります。

未経験求人で最も確認すべきことは何ですか?

どの分野の電気工事か(住宅・ビル・工場・通信・空調など)と、資格取得支援の具体的な中身です。「未経験歓迎」「資格取得支援あり」という表記だけでは、実際の教育内容も負担範囲も判断できません。面接で最初の3か月に何を覚えるかを聞くと違いが見えます。

電気工事士は未経験でも年収628万円もらえますか?

もらえません。628.1万円は平均年齢41.6歳の平均値で、見習いからベテランまでを含みます。未経験者の初年度年収は公的統計に分けて掲載されていないため、応募先の求人票で確認してください。

参考にした公的情報

資格制度、試験日程、法令上の作業範囲は変更されることがあります。応募や受験を進める前に、必ず公式サイトの最新情報を確認してください。

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まとめ

未経験から電気工事士になるルートは、資格なしで入社して働きながら取る道と、先に第二種を取ってから応募する道の2つです。今すぐ収入が必要ならルートA、在職中で勉強時間を作れるならルートBが現実的です。

いずれの場合も、電気工事士法により無資格では中心的な作業に従事できないという前提は変わりません。見習い期間が長く感じられる理由の一部はここにあり、資格取得が作業範囲を広げる最短ルートになります。

求人選びでは、分野・資格取得支援の中身・資格手当・教育の順序を必ず確認してください。「未経験歓迎」の一言では、入社後の働き方はわかりません。